いつものお豆腐売り場のおばちゃん

昨晩から、今日はお豆腐を買いに行こうと決めていた。いつものイトーヨーカドーでいつものお豆腐を買ったとき、ふと、思い出した。
バンコクで、いつも、お豆腐の売り場のケースからお豆腐を取り出してくれた、いつものお豆腐売り場のおばちゃん。
バンコクは、日系のスーパーもあり、日本とほぼ変わらない食生活を送ることが出来る。私は、駅に直結している、三越のようなちょっとおしゃれな百貨店の、4階にあるグルメマーケットという食品売り場で、いつも買い物をしていた。
そこに、日本の職人さんが伝授した、美味しいお豆腐やさんのお豆腐が特別なケースに入って売っていた。
他のお豆腐が約30B、100円ほどで売っている中、そのお豆腐は、2倍の値段!そして、3倍美味い! 豆腐好きな我が家は、そのお豆腐ばかり食べていた。
三日に一度、売り場に行った。売り場のおばちゃんがいなければ、勝手にケースを開けて取り出せるのだが、私の姿を見ると、すぐに来てくれるおばちゃんがいた。
「コー ソンティー ナ カー(2つちょうだいな)」
いつも、そう言って、きぬ豆腐や、もめん豆腐を買っていた。
4年間、そうやって、笑顔を交わして買っていた。
帰国が決まって、最後にお豆腐を買いに行ったとき、
「グラップ イープン カー(日本に帰ります)」
というと、おばちゃんは、涙ぐんで、じっと顔を見つめて
「マー ティアオ ナ カー(遊びに来てね)」
と言って、じっと顔を見つめて、涙くんでくれた。
いつもの言葉、いつもの笑顔、いつものお豆腐、そんないつもを4年間。
涙を流して、手を握って、お別れをした。いつもの豆腐売り場のケースの裏で。